自宅にいながらディズニーパークを楽しむブログ

年2、3回インパの遠方民がいかに自宅でディズニーパークを楽しんでいるかをお話しします

「スプラッシュ・マウンテン」の歴史について考えてみる

f:id:mitukeymouse:20211007152324j:plain

"Splash Mountain" by myfrozenlife is licensed under CC BY-NC-ND 2.0
スプラッシュ・マウンテン」は丸太型のボートに乗って動物たちの世界を探検するアトラクション。
最後には高所から滝壺へ真っ逆さまに落ちるシーンがあり、
スリル満点&びしょ濡れで若いゲストにも人気のアトラクションです。
このアトラクション、体験の単純さのわりに
誕生の経緯はかなーり複雑で、面白いんです
今回はスプラッシュマウンテンの誕生の歴史について見ていきましょう。

時は1980年台後半、カリフォルニアのディズニーランドではとある2つのことで悩んでいました。
1つは東京ディズニーランドにも存在するアトラクション「カントリーベア・シアター」のこと。
f:id:mitukeymouse:20211007152858j:plain

"Country Bear Jamboree" by Sam Howzit is licensed under CC BY 2.0
カリフォルニアのディズニーランドではこのアトラクションは「ベアーカントリー」というエリアに存在しました。
このエリアはカントリーベア・シアターのみが存在するエリアで、
パークのかなり奥地にありました。
この時カントリーベア・シアターはオープンして10年以上経ち、
エリアにもあまり多くのゲストが立ち寄らなくなっていました。

もう1つはトゥモローランドに存在したアメリカ・シングス」というアトラクション。

f:id:mitukeymouse:20211007152522j:plain"America Sings -- Geese Quartet" by ATIS547 is licensed under CC BY-NC-SA 2.0
このアトラクションはアメリカ建国200周年を記念して作られたもので、
様々な動物がアメリカの歴代の歌を歌うという劇場型のものでした。
こちらもオープンから10年以上が経ち、人気も落ちぶれていたのです。
しかしここで使われていた動物達はかなり精密に作られており、
アトラクションと共に処分するには惜しいものばかりでした。

ここまでで解消すべき課題は2つ

  • ベアーカントリーに多くのゲストが訪れるような新たなアトラクションを作る
  • アメリカ・シングスの動物達が登場できるようなアトラクションを作る

あ、あともう一つ

  • 若いゲストが興奮でき乗りたくなるようなアトラクションを作る

ここまで言えば、もうあとは想像できるかもしれません。
ディズニーパークのアトラクションを制作しているウォルト・ディズニーイマジニアリング。
その社員のトニー・バクスターは高速道路で出勤中にこんな考えが浮かんだそうです。
ボートに乗って滝壺に落ちたら面白いんじゃね?
しかしここまでならよくある遊園地がやっていること。
ディズニーのアトラクションならばこれを何度も乗りたくなる、何十年も愛されるようなアトラクションにしなければなりません。

そこでただ登って落ちるのではなく、ボートに乗って冒険してストーリーの結末で落ちるように考えます。
そこで結びついたのがアメリカ・シングスの件。
このアトラクションに動物達を移してしまえばいいとなりました。
問題はストーリー。
既存のディズニー作品の中で、アメリカ・シングスの動物が登場できるような作品を選ばなければなりません。
数多くの動物達が登場して、さらにオリジナルの動物が登場しても違和感がない作品…

 

ありました。
1946年公開のディズニー映画「南部の唄」

f:id:mitukeymouse:20211011111055j:plain

画像出典:Amazon.co.jp: 南部の唄(日本語吹替版) [VHS] : ボビー・ドリスコル, ウィルフレッド・ジャクソン, ボビー・ドリスコル: DVD
こちらの映画は、少年ジョニーとリーマスおじさんの交流を描いた映画です。
この映画ではリーマスおじさんが動物のお話を元に教訓を語るシーンがあります。
この教訓話に登場する動物の世界をアトラクションのテーマとしたのでした。
この世界では動物が服を着て話し、数多くの動物が登場するのでアメリカ・シングスの動物を配置するのにはぴったりでした。

こうして1989年、沢山の動物達が登場するスリル満点のアトラクション「スプラッシュ・マウンテン」がオープン。
エリアの名前のベアーカントリーは、熊以外の多くの動物が登場するようになったためクリッターカントリーに変更されました。
このアトラクションは新たなスリルと涼しさに飢えていた若者に大好評。
クリッターカントリーには数多くのゲストが訪れるようになりました。

元々カリフォルニアのディズニーランドの問題を解決するために作られたアトラクションでしたが、かなりの人気が得られたため東京ディズニーランドにも作ろうという話になります。
知ってます?カリフォルニアってすっごい晴れが多いんですよ。
(行ったことないですけど)
夏はほぼ毎日のようにサンサンの太陽が輝くため、それはもう涼しい滝壺の中に飛び込みたくなるわけです。
(行ったことないですけど)

さて、我らが東京ディズニーランドはどうでしょう?
日本は天候が変わりやすく、
ワールドバザールではアメリカの商店街に不釣り合いの巨大なガラス屋根を配置するほどです。
また冬には気温が氷点下まで下がり、白い雪が降り積もります。
本当にゲストは滝壺に突っ込みに来てくれますかね?
まぁ…季節と天気によりますよね。
しかし年中運営しているパークで季節と天気が合わないと乗ってくれないようなアトラクションを作るわけにもいきません。
しかしスプラッシュ・マウンテンは絶対に人気が出そう…

そこでボートと水路を改良し、かかる水の量をコントロールできるようにしました。
具体的には元々は1列乗りだったボートを2列乗りにし、冬場にはほとんど水がかからない程に調節することが可能になったのです。
こうして夏はびしょ濡れ、冬はスリルと、季節に合わせた体験ができるアトラクションになったのです。

f:id:mitukeymouse:20211011161821j:plain

オリジナルのスプラッシュ・マウンテンのボート、縦1列でなんと安全バーもありません。

"FINALLY! ...{EXPLORE}..." by tonyboytran is licensed under CC BY-NC 2.0

 

以上がスプラッシュ・マウンテンの歴史…と終わるところなのですが、
このままだと疑問を抱えたままになる方がいそうなので、少しだけ説明しておきましょう。
途中説明した、スプラッシュ・マウンテンのテーマとなった作品「南部の唄」
皆さん観たことありますか?
よほどのマニアでも観たことないというか、というか観たことある方は逆にすごいんですけど。
というのも、
この作品、DVD化及びネット上の配信は行われておらず
ビデオも絶版という視聴困難な作品なのです。
正規で見る方法は中古のビデオ(プレミア価格)を手に入れるのみ…
古い作品なのでネットに流出してたりしますが。

一体何故このような事になってしまっているのか?
詳細は省きますが、この映画での黒人と白人の関係の描かれ方が問題と言われています。
スプラッシュ・マウンテンはあくまでリーマスおじさんが話す動物の教訓話を元にしているので、南部の唄が規制される原因となったシーン群は登場しません。
そのため映画の問題にアトラクションは無関係
…と思われていましたが、少し話が変わってきました。

2020年6月、
カリフォルニアとフロリダにある2つのスプラッシュ・マウンテンが、ディズニー映画プリンセスと魔法のキス」をテーマにリニューアルされることが発表されました。

disneyparks.disney.go.comプリンセスと魔法のキスは黒人プリンセスによる新たなプリンセス像を描いた映画。
規制されるような黒人像を描いた南部の唄とは対極にあります。
公式には言及されていませんが、どうしてもプリンセスと魔法のキスが選ばれたのは偶然とは思えません。
東京ディズニーランドスプラッシュ・マウンテンが今後どうなるかは今のところ発表されていませんが、注目してみる必要はありそうです。

 

参考文献